ICRP Publ.の勉強会に参加
ICRP Publ.の勉強会に参加した。
今年の3月24日に原子力学会より掲題のメールが届いた。
珍しかったのは執筆者の解説によるICRP Publ.の勉強会ということである。
いうまでもなく、ICRP(国際放射線防護委員会)は原子力業界に籍を置くものにとって、神様みたいな存在である。
君臨すれども統治せず、の精神かどうか知らないが、放射線に関する医学的な知見に関する勧告は出すのであるが、採用するかしないかは各国の行政任せであり、強制力はないものである。
このICRPは権威のある機関であるが、かつては外国の委員が検討したものを国内でどうしようか、というスタンスであり、その委員の中に日本人がいる、ということも考えられない時代があったが、最近はそうでもないらしい。
早速興味本位で申し込みした。
内容としては被ばく線量の換算係数、宇宙飛行士の被ばく、発がんに関する生物学の3点である。
当日は13時頃に会場に着き、4,000円を払って、資料を受け取った。会場には私の知り合いの人がいたので、その隣に座った。
プログラムは末尾に添付する。
ICRP Publ.は節目になる報告が時々出ており、最初の節目のICRP Publ.9が1965年に出されている。
最初の頃はレムやラドという放射線の古い単位が使われていた。
次の節目のICRP Publ.26が1977年に出ている。この時に単位として、Sv(シーベルト)やGy(グレイ)が取り入れられている。
3番目の節目のICRP Publ.60が1990年に出ている。現在の骨子となる基準はほとんどこの1990年に出されたものをベースにしている。
福島事故で参考とされたのも確かこの1990年のものだったように記憶している。2007年に出されたICRP Publ.103はこの修正版だったと思う。
この辺の記憶はかなり怪しい。というのも一時かなりこのICRP Publ.の勉強もしたのだが、研究業務から離れてあちこち放浪している時にまったく勉強していないせいである。
もし興味のある人がいれば、下記のATOMICA百科事典のページに詳しい解説がある。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-05
最初の遠藤氏はICRP Publ.116の出版の事情から話し始めた。本文は5章あり、付録もA-Jの10個ある。外部被ばくの線量換算係数にかかることが主で、放射線の種類が増えて、パイ中間子や荷電粒子が加わり、中性子の被ばくに係るエネルギー分布も見直されたらしい。
人間を模擬したファントムを使い、男性200万ボクセル、女性400万ボクセルで計算したらしい。ボクセルは計算の基本となる格子のことである。
人間の身体を200万個に切り刻んで模擬したもの、とでも表現できるかもしれない。
また、今までは10Mevまでだったのが、10Gevまで広げている。核反応で出るエネルギー1個あたり200Mevであるから、その50倍のエネルギーで、主に加速器や宇宙飛行士の被ばくする宇宙線を考えたものかもしれない。
私は質問で、子どもの線量に関してどうか、ボクセルは新陳代謝を考慮しているか、ボクセル数が男女で2倍違うのはなぜか、と聞いた。
子どもの被ばくに関しては今まさに検討中ということだった。他の2点はあまり明確な回答はなかったと思う。
佐藤氏は宇宙飛行士の被ばく線量(ICRP Publ.123)ということで講演した。
宇宙線被ばくは銀河から飛んでくる高エネルギー荷電粒子であり、地上にいれば、大気園でブロックしてくれるが、宇宙空間では直射されるらしい。
太陽の放射線も通常では大した影響はないが、巨大なフレアができたりすると人体に重大な影響を与えることもあるらしい。
JAXAが定義した生涯の線量制限では年齢別であるが、だいたい500~1,000mSvくらいである。
宇宙ステーションにいると、1日0.5~1mSvくらい被ばくする。半年いると、発がんの100mSvを超えるので、発がん率はきっと数%は上がっているはずだが、サンプル数が少ないのでどうもよくわからない。
宇宙では軽い元素が遮へい材料としてはよいらしい。鉄や鉛はあまり好まれないようである。
火星まで往復すると、だいたい700mSvであり、火星に居住すると1,000mSvを超えるらしい。
私は質問で、実験機器等の製作の際に材料の制限はあるのか(質量の重い元素であればあるほど、実験者の被ばくが多くなる)、また、持っていく食事等の制限はあるのか聞いたが、どうもないらしかった。
最後の丹羽氏は生物学ということでなかなか聞きづらかった。
放射線生物学は第一種放射線取扱主任者の試験でも、この科目か、または法令のどちらかで落ち続けたと言っていいくらい苦手である。
内容としては、放射線が当たった時にマウスであれば、生後10日>生後2日>生後35日の順で発がんとなるらしく、この時に幹細胞かまたはそれから派生した機能細胞がダメージを受ける器官によって、発がんの率が違ってくる、とのことであった。
その傍証として、インド・ケララ州の自然放射線が年平均14mSv(1.6μSv/h)と高い地域で数万人のサンプルでほとんど発がんの影響がない例を挙げていた。
後で調べてみると、一例で下記のURLでこのデータに関する記事があった。
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/140317/cpc1403172245002-n1.htm
私は質問で、このケララデータに関して説明して欲しい、と言ったが、あまり真剣に取り上げてもらえなかった。どうも保健物理関係では常識に属するものらしい。
今回の勉強会では、興味本位で参加したのだが、低線量被ばくでの発がん性の影響なしのデータを示されてびっくりした。
こういうデータはもっと大々的に取り上げられてもいいのに、と思う。
これからもこうした勉強会に参加して、被ばくに関する知識を収集して、まとめていきたいと思う。
<日本保健物理学会シンポジウム>
執筆者の解説によるICRP Publ.勉強会
1.日時:2016年(平成28年)4月25日(月) 13:30~17:00
2.場所:東京大学 本郷キャンパス 医学部総合中央館(図書館)333号室
3.主催:日本保健物理学会
4.参加費: 保健物理学会正会員2,000 円、学生会員1,000円、非会員 4,000 円
5.プログラム
13:30-13:40 開会挨拶 吉田 浩子(東北大)
座長 甲斐倫明(大分県立看護科学大学)
13:40-14:30
ICRP Publ. 116 Conversion Coefficients for Radiological Protection Quantities for External Radiation Exposures
(外部被ばくに対する放射線防護量のための換算係数) 遠藤章(原子力機構)
14:30-14:40 質疑応答
14:40-15:30
ICRP Publ. 123 Assessment of Radiation Exposure of Astronauts in Space
(宇宙における宇宙飛行士の放射線被ばく評価) 佐藤達彦(原子力機構)
15:30-15:40 質疑応答
15:40-15:50 (休憩)
15:50-16:40
ICRP Publ. 131 Stem Cell Biology with Respect to Carcinogenesis Aspects of Radiological Protection
(放射線防護の発がん面に関する幹細胞生物学) 丹羽太貫(放影研)
16:40-16:50 質疑応答
16:50-17:00 閉会挨拶 甲斐倫明(大分県立看護科学大学)
-以上-
今年の3月24日に原子力学会より掲題のメールが届いた。
珍しかったのは執筆者の解説によるICRP Publ.の勉強会ということである。
いうまでもなく、ICRP(国際放射線防護委員会)は原子力業界に籍を置くものにとって、神様みたいな存在である。
君臨すれども統治せず、の精神かどうか知らないが、放射線に関する医学的な知見に関する勧告は出すのであるが、採用するかしないかは各国の行政任せであり、強制力はないものである。
このICRPは権威のある機関であるが、かつては外国の委員が検討したものを国内でどうしようか、というスタンスであり、その委員の中に日本人がいる、ということも考えられない時代があったが、最近はそうでもないらしい。
早速興味本位で申し込みした。
内容としては被ばく線量の換算係数、宇宙飛行士の被ばく、発がんに関する生物学の3点である。
当日は13時頃に会場に着き、4,000円を払って、資料を受け取った。会場には私の知り合いの人がいたので、その隣に座った。
プログラムは末尾に添付する。
ICRP Publ.は節目になる報告が時々出ており、最初の節目のICRP Publ.9が1965年に出されている。
最初の頃はレムやラドという放射線の古い単位が使われていた。
次の節目のICRP Publ.26が1977年に出ている。この時に単位として、Sv(シーベルト)やGy(グレイ)が取り入れられている。
3番目の節目のICRP Publ.60が1990年に出ている。現在の骨子となる基準はほとんどこの1990年に出されたものをベースにしている。
福島事故で参考とされたのも確かこの1990年のものだったように記憶している。2007年に出されたICRP Publ.103はこの修正版だったと思う。
この辺の記憶はかなり怪しい。というのも一時かなりこのICRP Publ.の勉強もしたのだが、研究業務から離れてあちこち放浪している時にまったく勉強していないせいである。
もし興味のある人がいれば、下記のATOMICA百科事典のページに詳しい解説がある。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-05
最初の遠藤氏はICRP Publ.116の出版の事情から話し始めた。本文は5章あり、付録もA-Jの10個ある。外部被ばくの線量換算係数にかかることが主で、放射線の種類が増えて、パイ中間子や荷電粒子が加わり、中性子の被ばくに係るエネルギー分布も見直されたらしい。
人間を模擬したファントムを使い、男性200万ボクセル、女性400万ボクセルで計算したらしい。ボクセルは計算の基本となる格子のことである。
人間の身体を200万個に切り刻んで模擬したもの、とでも表現できるかもしれない。
また、今までは10Mevまでだったのが、10Gevまで広げている。核反応で出るエネルギー1個あたり200Mevであるから、その50倍のエネルギーで、主に加速器や宇宙飛行士の被ばくする宇宙線を考えたものかもしれない。
私は質問で、子どもの線量に関してどうか、ボクセルは新陳代謝を考慮しているか、ボクセル数が男女で2倍違うのはなぜか、と聞いた。
子どもの被ばくに関しては今まさに検討中ということだった。他の2点はあまり明確な回答はなかったと思う。
佐藤氏は宇宙飛行士の被ばく線量(ICRP Publ.123)ということで講演した。
宇宙線被ばくは銀河から飛んでくる高エネルギー荷電粒子であり、地上にいれば、大気園でブロックしてくれるが、宇宙空間では直射されるらしい。
太陽の放射線も通常では大した影響はないが、巨大なフレアができたりすると人体に重大な影響を与えることもあるらしい。
JAXAが定義した生涯の線量制限では年齢別であるが、だいたい500~1,000mSvくらいである。
宇宙ステーションにいると、1日0.5~1mSvくらい被ばくする。半年いると、発がんの100mSvを超えるので、発がん率はきっと数%は上がっているはずだが、サンプル数が少ないのでどうもよくわからない。
宇宙では軽い元素が遮へい材料としてはよいらしい。鉄や鉛はあまり好まれないようである。
火星まで往復すると、だいたい700mSvであり、火星に居住すると1,000mSvを超えるらしい。
私は質問で、実験機器等の製作の際に材料の制限はあるのか(質量の重い元素であればあるほど、実験者の被ばくが多くなる)、また、持っていく食事等の制限はあるのか聞いたが、どうもないらしかった。
最後の丹羽氏は生物学ということでなかなか聞きづらかった。
放射線生物学は第一種放射線取扱主任者の試験でも、この科目か、または法令のどちらかで落ち続けたと言っていいくらい苦手である。
内容としては、放射線が当たった時にマウスであれば、生後10日>生後2日>生後35日の順で発がんとなるらしく、この時に幹細胞かまたはそれから派生した機能細胞がダメージを受ける器官によって、発がんの率が違ってくる、とのことであった。
その傍証として、インド・ケララ州の自然放射線が年平均14mSv(1.6μSv/h)と高い地域で数万人のサンプルでほとんど発がんの影響がない例を挙げていた。
後で調べてみると、一例で下記のURLでこのデータに関する記事があった。
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/140317/cpc1403172245002-n1.htm
私は質問で、このケララデータに関して説明して欲しい、と言ったが、あまり真剣に取り上げてもらえなかった。どうも保健物理関係では常識に属するものらしい。
今回の勉強会では、興味本位で参加したのだが、低線量被ばくでの発がん性の影響なしのデータを示されてびっくりした。
こういうデータはもっと大々的に取り上げられてもいいのに、と思う。
これからもこうした勉強会に参加して、被ばくに関する知識を収集して、まとめていきたいと思う。
<日本保健物理学会シンポジウム>
執筆者の解説によるICRP Publ.勉強会
1.日時:2016年(平成28年)4月25日(月) 13:30~17:00
2.場所:東京大学 本郷キャンパス 医学部総合中央館(図書館)333号室
3.主催:日本保健物理学会
4.参加費: 保健物理学会正会員2,000 円、学生会員1,000円、非会員 4,000 円
5.プログラム
13:30-13:40 開会挨拶 吉田 浩子(東北大)
座長 甲斐倫明(大分県立看護科学大学)
13:40-14:30
ICRP Publ. 116 Conversion Coefficients for Radiological Protection Quantities for External Radiation Exposures
(外部被ばくに対する放射線防護量のための換算係数) 遠藤章(原子力機構)
14:30-14:40 質疑応答
14:40-15:30
ICRP Publ. 123 Assessment of Radiation Exposure of Astronauts in Space
(宇宙における宇宙飛行士の放射線被ばく評価) 佐藤達彦(原子力機構)
15:30-15:40 質疑応答
15:40-15:50 (休憩)
15:50-16:40
ICRP Publ. 131 Stem Cell Biology with Respect to Carcinogenesis Aspects of Radiological Protection
(放射線防護の発がん面に関する幹細胞生物学) 丹羽太貫(放影研)
16:40-16:50 質疑応答
16:50-17:00 閉会挨拶 甲斐倫明(大分県立看護科学大学)
-以上-
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